弘前市の雪燈籠まつりの準備

私は雪道を雪の音を聞きながら歩いていた。
サクッ、サクッ、サクッ、サクッ。
小気味のいい音に親しみながら歩いていた。
ちょっと前の雪燈籠まつりの話を思い出しながら歩いていた。
自分の世界に入って、歩いていた。
どこからか、私を呼ぶ声。
「ひまき先生〜ぇ。ひまき先生〜ぇ」



反対車線の先で運転する車からの声。
メガネをかけた女性。
意表をついた声。
誰だろう。
いつもはメガネをかけていないので、その女性をすぐにはわからなかった。
目を凝らしてみると、大学職員だった。
雪のある車道をゆっくり進む。
その遅い動きのために、見定めることができた。
それに応えて手を振った。
人と車の速度がそう違わない雪国だからこその出会い。
わずか2秒の出会いであった。


1月8日16時半のことである。
その10分ほど前まで、弘前の雪燈籠まつりのことを聞いていた。
弘前市役所で雪燈籠まつりの担当者と差向いで1時間半。
1か月後の2月7日に始まる。
その準備は始まっている。
地元紙では、雪像の骨組をつくっている会場の模様が報じられている。


弘前市の冬まつりは雪燈籠まつりという。
弘前城公園が会場として使われる。
弘前城公園には天守閣と櫓がある。
それに似合う雪像。
城のある場所を見栄えよくする雪像。
燈籠なのだろう。
そこには、武者絵がつく。
雪の柱を作り、その上に屋根。
ろうそくを立てて、武者絵を浮かび上がらせる。
これを公園内につくる。


メイン会場にはその年のテーマにあった大型の雪像。
大きな雪のすべり台。
たくさんの小さな雪だるま。
弘前公園の北側の広場。
亀甲門を入ったすぐの場所だ。


この雪まつりは今年で33回目。
1977年に始まって、3日から5日の期間のまつり。
今年は2月7日(土)から11日(水)の5日間開催。


その準備は今が真っ最中。
雪が少ないために、雪を岩木山まで行ってかき集め、持ち込んでいる。
弘前城の桜の木を傷つけないように、重機や雪の重みで橋を壊さないように。
そんな配慮で会場づくりが始まっている。


弘前は、春は桜、夏はねぷた、秋は紅葉。
そして、冬は雪。
ねぷた以外は弘前城がステージ。
弘前の中心に広がる自由空間。
それが弘前城公園。


岩木山を見上げながら生活する19万の人々。
その人々に季節を刻むまつり。
まさに、地方都市の地方都市たるところ。


この4つの弘前のまつりの中での雪燈籠まつり。
このまつりは年の初めのまつり。
4つのまつりに起承転結があるとすれば、雪燈籠まつりは「起」だと思う。
始まりのまつりなのだ。


2年前の2007年の雪燈籠まつりに行った。
その年の4月から住むことにした弘前がどれほど寒いのか。
それを体で確認するために、このまつりを見に行った。


暖冬小雪のために、燈籠は土に汚れていた。
弘前中央高校口のガードマンが私に謝った。
折角の観光の期待を外したことを謝っているようだった。
それを聞いて、私は弘前のまつりは本物だと思った。
交通整理の仕事の人が、雪燈籠まつりを自分のことのように行動している。
私が弘前を好きになる瞬間でもあった。
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